押さえておこう!創業の基礎知識

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人気の飲食業、開業するにはどんな準備が必要?

 「レストランで自分の腕をふるいたい」「みんながくつろげるカフェをやりたい」「移動販売でこだわりのパンとコーヒーを提供したい」など、飲食店経営に夢を抱く新規開業希望者は多くいます。日本政策金融公庫の実態調査(2015年)によると、新たに開業した事業のうち、「飲食店・宿泊業」が占める割合は約6分の1。全体では「サービス業」「医療・福祉」に次いで3番目の多さになっています。
 しかし飲食店を開業するには、さまざまな資格や申請が必要ですので、どんな準備が必要なのかを簡単にまとめてみました。

営業開始までの流れ

(1)事前相談
 工事着手前に図面を作成し、管轄の保健所へ事前相談を行います。必要書類も、この事前相談で確認しておきましょう。
(2)必要な手続きの確認
 事前相談を踏まえ、自分のお店の内容等に合わせて、必要な届け出を確認しておきましょう。
(3)食品衛生責任者を選任
 施設または施設の部門ごとに、設置が義務付けられていますので、早めに取得しておきましょう。
  ※詳細は後述。
(4)営業許可申請
 保健所窓口へ申請を行います。申請後には店舗検査がありますので、検査を受けたい日の1〜2週間前までに、営業許可の申請を行いましょう。
(5)施設検査
 お店の施設が基準に適合しているかの確認が行われます。この時点で、お店が完成している必要があります。不適合の場合は施設の改修や再検査が必要ですので、開店予定日には、余裕を持っておきましょう。
(6)営業許可証の交付
 検査に合格すると、申請された保健所等の窓口で、営業許可証が交付されます。営業許可証が交付されるまでは営業できず、営業許可証の交付にも数日かかりますのでご注意ください。
(7)営業開始
 営業許可証と食品衛生責任者の氏名を店内の見やすい場所に掲示すれば、営業を始められます。

資格はいるの?

 「飲食店を開くには、調理師免許が必要なのかな?」と考える方も多いようですが、実は調理師免許がなくても飲食店の開業は可能です。最低でも必要となる資格は、「食品衛生責任者」と「防火管理者(収容人員が30名以上の場合)」の2つで、前者は保健所、後者は消防署の管轄となっています。

「食品衛生責任者」の資格を取得するには?

 食品衛生上の管理を担う食品衛生責任者は、飲食店を営業する場合、各施設に必ず1人配置することが義務付けられています。
 食品衛生責任者の資格を取得するには養成講習会(通常1日)の受講が必要となります。調理師、栄養士などの免許を持っている方は、講習を受けなくても申請すれば取得できます。

「防火管理者」の資格を取得するには?

 収容人員が30人以上の店舗となる場合は、「防火管理者」を置き、消防署などへ届け出る必要があります。延床面積が300平方メートル未満の場合は「乙種防火管理者」、延床面積が300平方メートル以上の場合は「甲種防火管理者」と、お店の広さで必要な資格は異なります。
 資格を取るには防火管理講習を受ける必要がありますので、自治体や日本防火・防災協会のホームページなどで確認しておきましょう。

資格の他に必要な届け出は?

 資格を取って、「営業許可申請」さえ行えば、これで大丈夫!......かというと、そういうわけではありません。
 消防署には「防火管理者」の届け出の他にも、「防火対象物使用開始届出*1」や「火を使用する設備等の設置届*2」を提出しなければなりません。
 また、深夜12時以降もお酒を出すバーなどなら「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」、スポーツバー、ディスコ・クラブ、ショーパブなどなら「特定遊興飲食店営業許可申請」、お客さまに対して接客を行うスナックなどなら「風俗営業許可申請」も行わなければなりません。
 提供するものや店舗形態によっては、他にも追加で必要な手続きがありますので、早めに確認しておきましょう。
 なお一般的な創業で必要な、税務署および市町への設立・開業の届け、県税事務所への事業開始の届け、従業員を雇う場合には労働基準監督署と公共職業安定所での手続きも必要です。法人の場合には、社会保険事務所での社会保険への加入も必須です。

  • *1:「防火対象物使用開始届出」建物や建物の一部を新たに使用し始める場合、使用開始7日前までに届け出が必要です。内装工事を行う場合、手続きは業者との相談になりますが、自分で内装工事を行う場合や店舗を居抜きで利用する場合には忘れがちですので、注意が必要です。状況により、届け出が必要かどうかは、最寄りの消防署にお問い合わせください。
  • *2:「火を使用する設備等の設置届」名称は届け出先により異なります。広島市の場合「炉・厨房設備・温風暖房機・ボイラー・給湯湯沸設備・乾燥設備・サウナ設備・ヒートポンプ冷暖房機・火気を生じる設備・放電加工機 設備届出書」。火を使用する設備を設置する場合、設備設置までに消防署に届け出てください。

移動販売の場合は? 同じ準備でいいの?

 低コストで開業できて自由に場所も選べるという理由から、移動販売車による飲食店の開業を目指す方もいることでしょう。その場合は、食品を扱う資格はもちろん、移動販売ならではの申請も必要になります。

◎ 移動販売にはさまざまな手続きが必要

 まず店舗同様、移動販売の場合も「食品衛生責任者」の資格と「営業許可申請」が必要となります。

食品衛生責任者
 食品営業を行う場合、店舗と同じように許可施設ごとに「食品衛生責任者」が必要ですので、車1台につき1人を設置しなければなりません。なお、1人が複数の責任者になることは原則できません。
営業許可申請
 店舗と大きく異なるのは、「仕込み」になります。よく「自宅で仕込みをして......」と考えがちですが、許可を得た場所以外で仕込みを行うことはできません。移動販売車内での仕込みがどこまで可能で許可を得られるかは、扱うものや車の設備によりますので、事前によく確認しておきましょう。もし、営業車以外で仕込みを行う場合には、別途営業許可の申請が必要となりますのでご注意ください。
 なお移動販売車の営業許可は、許可を受けた地域でのみ有効ですので、他地域で営業する場合には、追加で手続きが必要になります。
8ナンバーの交付
 移動販売車には改造がつきものですが、一般的に車内で調理を行う車の場合は、特殊用途の加工車として、8ナンバーの交付を受けることになります。違法な改造は車検に通らなくなるだけでなく、法令違反になりますので、専門業者などに相談しましょう。
販売場所の確保
 公道で営業を行うには、管轄の警察署長への道路使用許可申請が必要です。ただし、申請は可能ですが、公道での営業に許可はなかなか下りません。
 公園も営業場所として思い付きますが、やはり利用には管轄の地方公共団体、国土交通省などに申請が必要です。ただしこちらも、許可を得るのはかなり難しくなっています。
 よくあるのが、スーパーやパチンコ屋さんなどの駐車場を借りるやり方ですが、これも新規で許可をもらうのは難しい可能性がありますので、車両を発注する前に、出店場所にはある程度めどを立てておくべきです。

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