- TEGO 代表
- 中原 佑介
新事業で家業にイノベーションを。
次代を担う後継者の挑戦。
広島県呉市出身。実家は創業53年の歴史を持つ、地元に密着した建設会社。家業の影響もあり、大学では建築学を学び、卒業後は県外の建設業界で施工管理の仕事や不動産事業部での広報業務などを経験する。2015年には両親の希望もあり、地元にUターン。後継ぎとして家業を手伝いながら、新たなビジネスの可能性を追求し、竹チップを活用した新規事業「TEGO」をスタート。現在、業務の4分の3は家業、4分の1はTEGOやその他の活動が占める日々を過ごす。今後は「丁寧な暮らしを提供する人」をテーマに、まだ世の中にない新しいビジネスの創出を目指しているとのこと。
身銭を切って失敗したことで、
ビジネスの根本に向き合えた。
2015年から実家に戻り、家業の建設会社の仕事に従事するかたわら、まくことで雑草の防草効果がある竹チップを活用した新規事業「TEGO」をスタートさせました。きっかけは2018年の西日本豪雨災害です。根の浅い竹林は土砂崩れを招きやすく、前々から放置竹林が問題視されていましたが、災害時にあらためてその深刻さを実感しました。現在、TEGOでは竹林伐採、竹チップ販売、竹チップ施工の3つを柱に事業を展開していますが、今後もここからいろいろと発展させるべく、試行錯誤しているところです。
こうした新たな事業を起こす際、見極めなければならないのは、「自分が好きなこと(あるいは興味・関心のあること)」であるのはもちろんですが、それに加えて「世の中のニーズ」や「環境への貢献」といった社会への目線がなければ、ビジネスとしては成立しないということです。
実を言うと、私自身も最初は「好き」だけで突っ走っていたタイプでした。TEGOを立ち上げる前に、自分の貯金をはたいて、お好み焼きを模したマウスパッドや飲み干すと潜水艦が現れる呉のご当地マグカップを作って販売したのですが、3000枚作ったマウスパッドはたった500枚しか売れませんでした。完全に赤字です。
しかし、この失敗があったからこそ、ビジネスの根本と向き合うことができました。世の中がまだ認知していないニーズを探る大切さを知り、営業力を培えましたし、営業を通して出会えた人々も、今では大切な財産になっています。
家業を基盤にしたイノベーションを。
跡継ぎだからこそ両利きの経営感覚が必要。
地元のメディア等にTEGOが取り上げられると、どうしても新規事業ばかりにスポットライトが当たりますが、私には53年の歴史を持つ中原建設(株)の跡継ぎという一面もあります。日々の仕事の割合をざっと数値化すると、大体4分の3が中原建設の仕事で、残りがTEGOだったり、その他の活動だったりします。跡継ぎとしては、このバランスをどう配分するかも重要だと考えています。
私がこのような考えに至ったのは、「両利きの経営」という書籍の影響があります。この本はイノベーション理論の新たな定番書といわれているもので、世の中にイノベーションを打ち出していくには、既存の認知を超えた「知の探索」と継続的に知を深掘りする「知の深化」、両方が必要だとうたっています。
これを跡継ぎ経営者である自分のケースに当てはめると、長年地元で信頼を築いてきた家業が「知の深化」であり、新たに着手したTEGOなどのチャレンジが「知の探索」に相当します。これまで家業である中原建設は、主に公共工事を通して、地元の発展に貢献してきました。私が経営に加わり、新しいことに挑戦するようになってからは、家業の分野においても、建築家とコラボした意匠性の高い仕事を請け負ったり、こだわりのある店舗づくりに携わったりするようになりました。目立つ仕事をすれば当然露出も高まり、建築雑誌でも取り上げられるようになり、結果的に家業の分野においても、新たなブランディング・イメージを打ち出せたと感じています。
しかし利益率を考えると、こうした手の掛かる仕事ばかりだと、経営面にかなりのストレスを抱えます。変革だけではなく、継続可能なバランスを見極めることが、跡継ぎ経営者には求められると思います。いずれにしろ、「知の探索」と「知の深化」、双方をバランスよく継続していけば、いつかは十分な利益が望める独自の提案やイノベーションにたどり着けるのではないかと期待しています。
後継者と人材の確保は業界全体の課題。
新規事業で新しい風を吹かせたい。
建設業界全体にいえることですが、これからを担う人材確保が大きな課題としてのしかかっています。そのためにも新規事業を掲げて、魅力ある会社づくりを進めていかなくてはならないと思っています。
その一方で、従業員が安心して働ける環境づくりも手抜かりなく進めていく必要があります。これは私自身の反省でもありますが、TEGOを立ち上げた時、手伝いにきてくれた方が竹で手をけがしたことがあり、大変なご迷惑をお掛けしました。労災保険を適用することはできたのですが、自分自身よく理解しておらず、安全上のマネジメントや制度に関する知識不足など、経営者としての自分の甘さが露呈しました。新規事業というと経営面ばかりに気を取られますが、従業員が安心して働ける環境づくりや制度の熟知も大切な要素だと、身をもって学びました。今後はそういった面にも気を配りながら、一緒にがんばれる新しい仲間を増やしたいと考えています。
事業の展望としては、竹チップを発酵させて堆肥をつくり、その過程で発生する発酵熱を利用した、食品づくりやサービスなども展開していきたいですね。
自分の場合、新事業を手掛けるようになってから、普通に働いていたら出会うことがない方々と知り合うことができ、役立つ助言もいただけました。こうしたことも自ら事業を起こす面白さであり、やりがいでもあります。また、いろんな人を巻き込むことこそ、ビジネスにおいて新しい波を起こす原動力になるのではないかと感じています。これからも家業という「知の深化」に軸足を置きつつ、「知の探索」に相当する新事業を発展させて、市場に新しい風を送り込めたらと考えています。
事業所名 | TEGO |
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所在地 | 〒737-2603 広島県呉市川尻町西1-2-42 |
連絡先 | TEL:0823-87-2446 |
ホームページ | https://www.tego.tips |
創業 | 2019年 |
従業員数 | - |
業種 | 加工、製造販売 |
事業内容 | 竹林伐採、竹チップ販売、竹チップ施工 |