- 株式会社フォーシー/瀬戸内醸造所株式会社 代表取締役
- 太田 祐也
愛する故郷の食文化を発信
SETOUCHIを旅するワイン
広島県三原市出身。幼少より瀬戸内の風景を見て育つ。明治大学卒業後、25歳の時に地方創生を業とする株式会社フォーシーを設立。日本各地で地域ブランドを立ち上げて育成し、小規模事業者を支援してきた。一次産業の衰退とともに失われつつある地域の食文化を見直し、世界に発信する『瀬戸内ガストロノミー計画』を始動。2019年より、瀬戸内醸造所株式会社を立ち上げ「SETOUCHIを旅するワイン」「SETOUCHIを旅するワイナリー」というコンセプトのもと、瀬戸内地域の篤農家の方々と共にワイン造りを通じた六次産業化に取り組む。
瀬戸内の一次産業を次世代へ
魅力的なプラットホームをつくる。
当社が目標としているのは、地域にとって重要な一次産業を次の世代に継承するプラットホームづくりです。つまり、ワイナリーや飲食店といった枠を超えて、地域の生産者さんたちを巻き込みながら、魅力的なビジネスモデルを生み出すことで、「農業をやってみたい」という次世代の担い手を増やし、継承者不足に悩む状況を打開するきっかけになればと考えています。
そもそも私が「食」に目を付けたのは、国内外ともに観光の目的で一番に挙げられるのが「食」だからです。海外では特定のお店を目当てに、世界中から観光客が訪れるレストランがたくさんあります。しかし、日本にはそこまでの店はあまりありません。そこで、自分が生まれ育ったこの瀬戸内で、世界中から人が集まる、世界一予約の取りにくいレストランをつくりたいという思いが生まれました。瀬戸内一帯は景観だけでなく、豊かな食文化も持ち合わせています。以前、しまなみ海道を自転車で渡った時に、一つ一つの島に地酒があったら面白いと思い付きました。それなら瀬戸内で造ったワインと、土地特有の食材をペアリングできれば、とても豊かな食文化体験を提供できるのではないかと思い至ったのです。加えて、偶然友人にブルゴーニュで修行してきた醸造家がいたことや、ミシュランで取り上げられたシェフがいたことも後押しになりました。
私たちのつくり上げた「瀬戸内醸造所」が、瀬戸内の食文化の発信源となれば、地域を支える一次産業への好循環を起こせると確信しています。
マーケティングは掛け合わせ。
物語を増幅させる仕掛けづくりを。
現在、日本国内にワイナリーは400ほどあります。国内では果実酒のシェアが4%程度なので、新規参入者はかなりのレッドオーシャンで戦うことになります。そのためマーケティングやブランディング戦略はかなり綿密に計画しました。まず、ペルソナを35〜40歳の高感度な女性たちに設定して、求めるニーズや課題を抽出し、それに沿った形でプロダクトデザインを実施しました。デザインはグッドデザイン賞の審査員でもある木住野彰吾氏に依頼したのですが、一発で納得させられるデザインが上がってきました。デザインにはいつも口を挟む私も、さすが良い仕事をされるなと感服しました。
また、商品開発においては、「なぜ、それをやるのか?」「誰がやるのか?」といったストーリーを細かく構築しています。それはレッドオーシャンの分野であり、後発でもあるという意識からです。競合が多数いる中で、ただワインを造って売るだけでは埋没します。そこから抜け出して事業を進めていくには、ストーリーを増幅させる「何か」との掛け合わせが必要です。それは商品に豊かなイメージを添えてくれるデザインだったり、土地(ロケーション)だったりとさまざまです。例えば2年がかりで交渉した醸造所のロケーションは、三原市須波の造船所跡地でした。この地は私の実家の菩提寺がある場所でもあり、ここから見える景色は、まさに私が幼い頃から目にしてきた瀬戸内です。これほど瀬戸内醸造所のストーリーにしっくりくる場所はないと直感が働きました。2年もの時間をかけて粘って交渉したのは、私たちのストーリーを完成させるのに、どうしてもこの場所が必要だったからです。
ちなみに建築については菅原大輔氏に設計を依頼しています。スタッフと共に「瀬戸内らしい情景に溶け込む建物はどのようなものか」を一から議論しながら、地方にわざわざ足を運んでくれる仕組みづくりの一端を担う建物を造っていただきました。また、竹原の本社も土地の産物であるレンガを活用し、印象的な内装に仕上げています。ワイン造りの条件として、土も大事な要素の一つ! そんな思いからレンガを採用しました。
チャンスをつかみたいなら、
誘いを断らない「イエスマン」であれ!
創業までを振り返り、つまずきや失敗を挙げるとしたら、やはりコロナ禍に見舞われたことでしょうか。飲食業・酒造業はのっけから痛手を被ってしまいました。私たちのストーリーに共感してくれて自然と人材は集まるものの、接客スタッフに関してはコロナ禍が影響し、現在も随時募集している状況です。
それと資金面でも、金融機関に言われるがままに、設備資金や準備資金を削ったのが失敗だったと思っています。結局、開業時に足りないものが続出し、それを工面するのに大変苦労しました。これは私の持論ですが、「金融機関のアドバイスは、自分の中に落としこんでから、事業計画に反映するように」と、これから創業される方たちへお伝えしたいですね。金融機関は金融のプロではありますが、実業のプロではありません。私は仲間と練り上げた計画を信じて、その資金計画に沿って事業を進めていくべきだと思います。ただ、金融機関の営業は融資部と事業家をつないでくれる重要な存在です。良好な関係を築き、彼らを巻き込んで融資部を説得しやすい体制を築いておくことが、事業をスムーズに進めるコツだと思います。いずれにしろ、自分たちの事業が魅力的であれば、融資もおのずとうまくいくはず。全ては皆さんの立案した事業計画次第です。
その他、創業を目指す際、さまざまな分野の専門家とのネットワークが大きな支えになります。あるいは事業家として尊敬すべきメンターの存在など、自分自身を上のステージに引っ張り上げてくれる人との交流は、生涯を通じてかけがえのないものです。
よく私は笑い話で「おれはイエスマンだから」と言っているのですが、これはどこにどんなチャンスが転がっているか分からないから、誘われたら必ず顔を出すという意味を込めた私流の表現です。もしかしたら誘われた集まりの席で、ビジネスのヒントになるような良い情報と出会うかもしれません。それを逃さずキャッチできるのは創業者のセンスです。多動であることはチャンスをつかむ最良の方法。皆さんもイエスマンになって、チャンスと巡り合う機会を増やしてほしいと思います。
事業所名 | 瀬戸内醸造所株式会社 |
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所在地 | 〒725-0022 広島県竹原市本町3-10-37 |
連絡先 | - |
ホームページ | https://setouchijozojo.jp |
創業 | 2019年 |
従業員数 | - |
業種 | 食品製造 |
事業内容 | 果実酒製造・販売、レストラン運営 |