- おけいこドットコム合同会社 CEO
(社)創業コンシェルジュ協会 代表理事 - 湊 容子
小さな起業家を支え、
人やまちの未来を輝かせたい
歯科衛生士として6年間働いた後、結婚を機に退職。子育てに専念している際、空いた時間に習い事をしたくても、条件に合う先生が見つからず苦労した経験から着想。習い事の先生と生徒をつなぐプラットホーム、「おけいこ.com」を2008年に構築した。半年後、参加したビジネスコンテストで、ユニークなアイデアと親しみやすいネーミングが評価され、見事入賞を果たす。その後も女性起業家の伴走型支援、セミナー講師を行う一方で、企業の広報案件を年間200件受諾するまで成長させる。2016年には、「おけいこドットコム合同会社」として法人化を実現。さらに創業を支援する「(社)創業コンシェルジュ協会」を立ち上げ、その代表理事も務める。
事業のいろはも知らずに参加した
ビジネスコンテストが分岐点。
事業として「おけいこ.com」と「創業コンシェルジュ協会」の2つを営んでいますが、どちらも目的は、町の小さな起業家たちの支援です。ここでいう“小さな起業家”とは、リスクを小さく抑えて始め、段階ごとにビジネスの拡大を目指す事業者です。ライフスタイルを大切にしながらも、「働きたい」という強い意欲を持った女性たちが中心です。
そもそも私自身、創業の道を選んだのは母親になってから。子どもが幼稚園に行っている間に習い事をしたくても、なかなかぴったりの教室が見つかりませんでした。そこで思い付いたのが、町の先生と生徒を結ぶサイト「おけいこ.com」です。
実際に起業家である先生方にヒアリングすると、集客方法や情報収集など、事業の悩みを共有する場が求められていると分かりました。そこで表向きは集客、裏では先生方を支えるコミュニティーという、ポータルサイトのコンセプトが次第に固まったのです。最初は「小遣い稼ぎになるかも」くらいの軽い気持ちでしたが、それがさらにブラッシュアップされたのは、銀行の紹介で参加したビジネスコンテストです。
それまでのビジネスキャリアは、結婚前に歯科衛生士として働いた6年間が全てで、企画やプレゼンなどに携わったことは一度もありませんでした。しかし銀行の担当者さんが、コンセプトの立て方から収支計画の作成、プレゼンに至るまで、ゼロからサポートしてくださり、コンテストで入賞することができました。コンセプトの策定では、「湊さんにとって一番大切なものは何?」と何度も聞かれました。おかげで「人が大事です。文化や私たちの暮らす広島も大事です」という答えを見つけました。ビジネスの先に広がる人の在り方や、社会とつながる意識が芽生え、この意識こそが長く事業を続ける上で最も重要だったと感じています。
道半ばで経営を諦めるのは、
「自分が何者か」を知らないから。
ビジネスコンテストに入賞した翌月には、キッチンのショールームで、毎月15回の料理教室を運営するようになります。これをきっかけに次々と企業案件が舞い込み、売り上げも安定しました。企業と組んだ新しい仕事への挑戦で、実績とノウハウを順調に築いていたのですが、その一方で先生たちがどんどん辞めていく事態が発生しました。
「集客の悩み」「家族からの反対」「人間関係のトラブル」などで、事業継続が困難と諦めてしまっていたのです。それならと、創業の基盤(本質)を教えるための2つ目の事業「創業コンシェルジュ協会」を立ち上げました。
この事業では、さまざまな経営者を見てきましたが、うまくいかない人の多くには共通点があります。それは、表面上のマーケティングを重視しすぎることです。例えば、SNSでフォロワーを獲得できれば売れる、と信じている人がすごく多いのです。そこにはビジネスの本質が欠けています。
小さな起業はリスクが少ない分、すぐに事業者になれますが、自分がこのビジネスを行う理由、あるいは人や社会との関わりを意識していない方が驚くほど多いです。どんなに最新のノウハウで武装しても、「自分は何者か」が欠けていると、ブランディングは不完全になり、効果的なマーケティングにたどり着けません。社会を俯瞰する視点を持ち、自分とビジネスと社会の関わりを見極めることが、創業を成功させる最大の秘訣だと確信しています。
自由であっても、放任は許されない。
コミュニケーションが絆を強くする。
実は、個人事業主でやってきた期間が7年間もありました。その理由は、自由なスタイルで働きたかったから。さすがに現在は、法人として事業を広げていますが、それでも完全リモートの推進など、メンバーの自由を極力尊重しています。
しかしながら、その自由が危うくなった時期もありました。2016年に法人化した際のことです。管理することが一気に増え、それまでの常識が通用せず、社内体制はボロボロに。作り手であるシステムエンジニアの共同経営者と売り手である私との意思疎通が不十分でシステム投資に関して大きな乖離が出るなどし、組織の未熟さが露呈します。成長に必要な投資と理解できたものの、当面の資金繰りに苦労しました。
程なくしてコロナ禍の影響を受け、オンラインによる事業ニーズが増大。結果的にそのシステムが大変な強みになりましたが、当時は自由を尊重するあまり、話し合いをおろそかにしていたことを後悔しましたね。ただ当社のメンバーは、意見の相違はあっても、同じ方向を向いて歩めるとても大切な仲間たちです。人材集めはご縁と時々の流れに任せていますが、ビジネスの本質を自覚しているからこそ、事業にふさわしいチームを組めていることも自負しています。一方で、「管理」があるからこそ、「自由」が許されるということも痛感しました。
これからは、創業に挑戦する方や副業に携わる方が、ますます増えると予測されます。そんな方たちへのアドバイスとして、まず事業計画書を作成し、自分の未来を数値化することをお勧めします。私はビジネスコンテストに参加したおかげで、経営者の視点を持つことができました。あの時、銀行の担当者さんから受けたレッスンが、私のビジネスの原点です。幸い私たちの周りには、銀行をはじめ行政や商工会議所など、創業をサポートしてくれる団体がたくさんあります。そうした助けを得ながら、創業者として成長し、事業をつくる醍醐味を満喫してください。決めるのも、進むのもあなた次第! あなたの事業が、あなたを思わぬ未来へ連れていってくれるはずです。
事業所名 | おけいこドットコム合同会社 |
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所在地 | 〒733-0001 広島県広島市西区大芝2丁目11−10 |
連絡先 | TEL:082-237-8800 |
ホームページ | https://okeiko-okeiko.com |
創業 | 2016年2月 |
従業員数 | 4名 |
業種 | サービス業 |
事業内容 | ・習い事を中心としたコミュニティ運営、コンサルティング事業 ・各種研修、イベント企画、運営、PR、プロモーション ・デジタルコンテンツ事業 |