付加価値とはプラスαばかりではない!
顧客の課題から生まれた24時間ジム。

  • PROFILE
  • 前職のエンジニア時代に米国・デトロイトに駐在。運動不足から体調を崩したが、当時住んでいた集合住宅に完備されていたジムでトレーニングを行い、体力を回復したことで、運動と健康の大切さを実感。その時の経験が、現在運営するハコジムのビジネスモデルの源泉となっている。帰国後、エンジニアを退職し、創業を目指してMBAが取得できる経営専門職大学院に入学。米国で着想を得たビジネスモデルのブラッシュアップを図りながら、経営知識の研鑽に励む。卒後の2017年5月に株式会社ハコジムを創業。

教えて先輩!創業でつまずくポイント、乗り越えるコツ その1
チャンスは新分野にあるとは限らない

必要最低限を求める声に応えて、
継続につながるトレーニング環境を提供。

 トレーニングジムというと、プールやスパが完備された施設を思い浮かべる方も多いと思いますが、弊社が運営するハコジムは、24時間いつでも利用できる個室ジムです。必要最低限の設備で、月々3,800円というリーズナブルな金額で利用できるのが特長です。そもそもこのビジネスモデルを思い付いたのは、エンジニアとして自動車部品の開発に携わっていたサラリーマン時代のこと。米国駐在中に運動不足で体調を崩した際、マンションに住人専用のトレーニングジムがあるのを知り、ジムで健康づくりに励んでいましたが、その時こんなふうにいつでも気軽に利用できるジムがあれば、より多くの方の健康づくりをお手伝いできるかもしれないと考えたのです。

 トレーニングジム自体は既存のビジネスモデルですが、既存のスタイルにまったく問題がないかというと、そういう訳ではありません。例えば「利用者が継続しない」などの問題は、この業態が常に抱える課題であり、その1番の理由は価格だと言われています。それならやり方を変えることで、新たなビジネスチャンスが生まれる。大きなジムでよく見かけるズラリ並んだトレーニングマシンやプール、スパなどは本当にユーザーにとって必要なのでしょうか? 必ずしもそうとは限らないし、専門家の中には「主要なトレーニングは、バーベルとダンベルで十分だ」という方もいます。そこで弊社では、ユーザーの求めるニーズと真摯に向き合い、必要最低限の設備でリーズナブルに、いつでも気軽に利用できるトレーニング環境を提供しています。おかげさまで弊社のサービスは、「運動したいけど、自宅ではなかなかモチベーションが上がらない」といったお客さまに大好評で、現段階で広島エリアに6店舗、福岡に1店舗を展開中です。
 創業におけるファーストステップは、いかにユニークなビジネスモデルを考え出せるかがポイントですが、もしもそこで立ち止まっているなら、とにかくユーザーの声に耳を傾けてみてください。新しいビジネスは新分野にばかりあるとは限りません。既存の事業の中にも新しいビジネスのヒントが潜んでいます。

教えて先輩!創業でつまずくポイント、乗り越えるコツ その2
思い込みと実際のニーズのズレは早めに修正

小さくリリースして、反応を見て実施。
省エネ事業展開でリスクを未然に回避。

 創業時に限らず、事業を継続していく上で、「ユーザーの声を聞くこと」はとても大切です。自分の場合、常にアイデアは浮かぶのですが、自分がいいと思っても、果たしてユーザーがどう受け止めてくれるかはよく分かりません。そこで、何か新しいことをする際は小さくリリースして、良い反応が得られれば本格的に展開していくようにしています。ニーズは見誤ることもありますし、やってみなければ分かりません。それを無視して一気に突き進んでしまうと、失敗した時にやり直すのが大変です。日頃からユーザーの声に耳を傾け、もしもこちらの思いとズレがあるなら、早めに修正した方がよいと思います。

 例えば、集客のキャッチフレーズ一つでも、こちらの思惑とニーズのズレを推し量ることができます。弊社の場合、集客はもっぱらウェブ広告がメインですが、ウェブは数字を把握しやすいため、お客さまがどんなワードに反応しているかといったデータを得られるメリットがあります。トップの第六感で新しいことにチャレンジして、成功を手にするといったケースもあるかもしれません。でも残念なことに、自分はそんなに勘が働くタイプではないし、メンバーの多くもトップの勘だけで付いてきてはくれません。チームが納得して、ストレスなく働くためにも、裏付けとなる確かなデータは必要です。 アンケートやウェブ広告を活用して、顧客の満足度や集客結果などは常に数字として把握しておきたいものです。

 創業当初から全国展開を目標としてきた弊社ですが、実を言うと、現段階ではやりたいことの100分の1もできていません。まだまだ挑戦したいことがたくさんあるので、まずはお客さまの課題から始め、深く新サービスの模索を続けたいと考えています。大切なのは、ユーザーが欲していないものはつくらないこと。ひとりよがりのサービスを提供しても、貴重なリソースを無駄に消費するばかりです。

教えて先輩!創業でつまずくポイント、乗り越えるコツ その3
創業準備にかける時間はほどほどに

海外に比べると、日本は創業者に優しい。
リスクを恐れ過ぎては何もできない。

 自分の場合、サラリーマンを退職してから創業するまで、準備期間として、MBAが取得できる大学院に通いました。経営の知識を体系的に学びたいのが理由でしたが、振り返ると、準備期間はもう少し短くできたと感じています。もちろん大学院で得た知識やネットワークは有意義ですが、創業を思い立ったその時の勢いに、もっと委ねてもよかったのかなというのが、実際に創業してみてからの感想です。時間がたって客観的になれるからこそ、これから創業される皆さんには、「創業を必要以上に怖がらなくても大丈夫」とアドバイスしたいですね。
 とはいっても、当時の私はエンジニアとしてそれなりの責任ある立場にもありましたし、何より家族を巻き込むことに迷いがあったので、そんな考えには至りませんでした。しかし海外に比べると、日本はずいぶんと創業者に優しい社会です。創業に至るまでのサポートもしっかりしているし、失敗した時でさえ、ちゃんとした救済措置があります。必要以上にリスクを恐れなくてもよいと思います。

 エンジニア時代、自分は「ゼロから新しいものをつくってきた。これは自分にしかできない仕事だ」という自負を抱いて働いていました。しかし、実際はそうでもないんですよね。会社という組織の中では異動があり、自分のポジションに別の人間が来ても、それなりに回っていくものです。一方この「ハコジム」という事業は、創業者である自分がいなかったら生まれなかった事業です。自分が創業していなかったら、お客さまもこのサービスに巡り合わなかったかもしれないし、運動していないかもしれません。まったく知らない人たちにプラスの影響を与えるという点では、ものづくりと同じくらい大きな喜びがあり、なおかつ自分にしかできない仕事です。これこそ創業の魅力だと実感しています。

会社情報

事業所名 株式会社ハコジム
所在地 〒732-0822 広島市南区松原町10番22号5階
連絡先 TEL:050-5306-7673
ホームページ https://hacogym.jp
創業 2017年5月
従業員数 7名
業種 サービス業
事業内容 フィットネスジム運営システムの開発・提供

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