- Cafe あかいはりねずみ 代表
- 水島 早苗
キーワードは、非日常。
世界の味を再現する、旅するカフェ。
パン好きが高じて、1年間ドイツのパン屋で修行。そこで知り合った職場仲間たち(主に中東からの移民)の故郷を訪れたことで、未体験の食文化の魅力に目覚める。パン屋での修行が一区切りした後は、世界各地の朝ごはんとカフェを巡る旅へ出発。約70カ国の旅行体験を生かして、2018年8月、広島市南区に「Cafe あかいはりねずみ」をオープン。世界各地で体験したさまざまな食文化を、インバウンドを含む旅好きのお客さまへと提供している。
自分の体験を提供する、
ツーリズムをコンセプトとしたカフェ。
海外の料理といえばフレンチやイタリアン、中華などは容易に思い付くものの、それ以外の国の料理だと、多くはイメージできない方がほとんどではないでしょうか。私も、移民労働者が集うドイツで暮らして、初めて多彩な食文化の魅力に目覚めました。ですので、このカフェをオープンさせる時には、旅も諦めたくありませんでした。海外に出掛けながら常に自分をアップデートし、このお店で旅での体験を提供することで、お客さまにも「非日常」を感じてほしいと考えているのです。
お店の経営スタイルとしては、通常営業では「朝ごはん」をメインに提供し(ちなみに週末は、日によってさまざまな国の朝ごはんを提供)、旅行で仕入れてきた食材と料理を振る舞う「スペシャル・イベント」も時々開催しています。朝ごはんをメインとしたのは、最初はゲストハウスに宿泊するインバウンドの観光客に利用してもらいたいと考えていたからです。しかし、実際にカフェをオープンしてみると当てが外れて、今は地元の方に認知してもらおうと、軌道修正しているところです。「ツーリズムをコンセプトとしたカフェ」=「あかいはりねずみ」という認識が地元に定着すれば、自然とそこからインバウンドの流れが生まれるのではないかと期待しています。
とにかく今は、SNSを活用し、チラシを配布することで、お店の存在を知ってもらうことに力を入れています。SNSでは、インパクトのある発信となるように、旅先でのレポートなどは、なるべく濃い内容を心掛けています。実は先日、アイルランドと黒ビールをテーマにしたイベントを行い、15人ほどのお客さまが参加してくれましたが、そのうち3人は、SNSを通してご予約いただいた新規のお客さまです。アイルランドの他にも、ロシア、ポーランド、トルコ、ギリシアなどと、多彩な国のイベントを開催しましたが、その都度、お客さまからうれしい反応を頂いています。
思いが先走るばかりで、具体化しなかったが、
支援機関への相談で道が開けた。
ありがたいことに、お店のコンセプトについて話すと、多くの方が「それは面白い!」と興味を持ってくれます。しかし創業する前は、自分のやりたいことをどう具現化すればよいのか分からなくて、ずいぶん悩みました。実を言うと、最初からカフェをやりたかったわけではなく、ただ自分が旅で体験したことをどうにかしてアウトプットしたいという思いがあるだけでした。
そこで支援していただいたのが、2017年にオープンした「イノベーション・ハブ ひろしまCamps*」の方々です。漠然とした私の思いを丁寧にヒアリングしてくれて、実行以前のアイデアを整理する段階から相談に乗ってくれました。創業の相談というと、すでに具体的な青写真が描けていて、お金のことなど経営に関して十分に勉強していないと、相手にしてもらえないのでは?という不安がありましたが、勇気を出して相談して正解でした。
私としては、何から話していいかも分からないくらい、フワフワとした思いだけでしたが、一問一答を繰り返す中で、「そのアイデアを実現するなら、カフェというスタイルがいいのでは?」とか、「1カ月の売り上げは、どれくらいを目標にするか?」など、自分の創業の内容が見る見る具体化していきました。同じ頃、Campsを訪れた相談者の中にも、私のように考えがまとまっていない方がたくさんいましたので、このような相談窓口は、敷居の高い所ではないのだと安心しました。創業する場合、身近な人にアドバイスを求めることも大切ですが、それだけでは先に進めないこともあります。一人で悩むくらいなら、勇気を出して専門の支援機関を頼ってみるのもいいなと感じました。
* イノベーション・ハブ・ひろしまCamps(キャンプス)は、新たなビジネスや地域づくりなどにチャレンジする多様な人が集まるイノベーション創出拠点です。コーディネーターが常駐し、創業相談なども開催しています。
https://www.camps-hiroshima.jp/
思いを曲げずに自己表現したからこそ、
いろいろな人たちとの出会いに恵まれた。
もう一つ、支援機関を利用してよ良かったのは同じように夢を持つ創業仲間に出会えたことです。ビジネスを始めると、それぞれが孤独な経営者になりますが、迷った時や困った時に、同じ境遇で分かり合える仲間がいるのはとても心強いです。中でもCampsが主催するチャレンジマルシェに参加した仲間とは、今でも大の仲良しです。よく集まって世間話をしながら、情報交換を行っています。先日、2週間ほどコスタリカを旅行していたのですが、私が留守の間は、店舗を持たない若い創業者たちに、お店を出してもらっていました。創業者間のネットワークがあると、そんなこともできて楽しいですよ。
創業仲間の他にも、できれば同業の先輩経営者が身近にいるとありがたいですね。私は経営者として「先を読む力」がまだまだなので、同業の経験者の意見は本当にありがたかったです。例えば店の場所を決める際、「ゲストハウスのある広島駅付近」ということだけは確定していたのですが、本当にこの物件で良いのか、まるっきり検見当がきませんでした。そんな時に先輩から「その場所に立って、自分の目で1日の人の流れを観察した方がいい」と言われました。ここに店を構えたのは、その助言を実践した上でのことです。
お店を出してからは、創業は自己表現の場であることをあらためて実感しました。「ドイツでのパン修行の経験を生かして、パン屋を開けばいいのに」と言われたこともありますが、そうしなかったのは、単に食材を売るのではなく、旅をベースに世界の食と文化を伝えたかったからです。その思いを曲げずに自己表現したことで、いろいろな人たちとの出会いに恵まれ、さらに表現の幅が広がったと感じています。
今後の展開としては、やはり当初に目標としていたインバウンドにもっと絡んでいきたいですね。それがかなったら、次はアウトバウンド。例えば「Cafeあかいはりねずみ」発の旅なども手掛けてみたいと考えています。不安はあるものの、創業は実現するまでも楽しいですし、実現してからはもっと楽しいことが待っています。何かの手段で自分を表現したいと思うなら、創業を一つの選択肢に入れるとよいのではないでしょうか。
事業所名 | Cafe あかいはりねずみ |
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所在地 | 〒732-0824 広島県広島市南区的場町1-7-2 |
連絡先 | TEL:082-261-0260 |
ホームページ | https://www.facebook.com/igelhiroshima/ |
創業 | 創業2018年8月 |
従業員数 | - |
業種 | 飲食店 |
事業内容 | 世界各地の食事やコーヒーなどを提供するカフェ |