- tumugi
- 前田 亜由美
一つ一つ手作りにこだわった、
上質なバッグとエプロンの販売。
子育てが落ち着いた頃に、バッグやエプロンの手作りに傾倒し始め、気が付いたらSHOPの共同オーナーへ。上質なリネンを使ったバッグやエプロン、小物などを製作し販売している。立ち上げから3年後に、共同オーナーが相次いで離脱し、一時は自信を喪失。しかし新たな人との出会いなどを経て、自己ブランディング力を高める中で、自信は確信へと変わり、今では大きなやりがいを持って物づくりに挑戦している。
失敗があるからこそ、次へ向かえる。
プラス思考から生まれた新たな道。
2011年3月に、アロマセラピーを行う女性と、セミオーダーの洋服を作っていた女性、そして私の3人でSHOPを立ち上げました。私はもともと物づくりに興味があり、結婚後に子どもを育てる合間に、自宅でバッグやエプロンを作っていたのです。そして、子育てが落ち着いた頃から少しずつ本気モードになり、イベントに出展して販売を始めていました。今入居しているビルも、もともと1階のカフェのオーナーとは仲が良く、展示会をさせてもらっていました。そしたら、たまたま2階が空くという情報があったので入居しました。一緒にSHOPを立ち上げた彼女たちとの出会いも、そのカフェで2人を紹介してもらったのがご縁でした。
その何となく集まった3人が、それぞれ資金を持ち寄って共同でSHOPをスタートさせましたが、みんな自分たちのことで手いっぱいで、他の人に構っている余裕はありませんでした。オープン後も、3人で集まって話はしたんですがまとまらない状況でした。3年目を迎えた2014年に、1人が上京するためにいなくなって、もう1人も自分の店を持つためにいなくなって、気が付いたら残ったのは私だけ。独りぼっちになって、精神的にもつらくなりました。でも、せっかくオープンさせた自分のSHOPは閉めたくないですし、続けていくにはどうしたらいいのか。いろいろ考える中で、商工会議所に相談して、什器をそろえ直すために資金を調達しました。
それぞれと離れる時には多少のいざこざもあって、こんなことになるなら一緒にやるのじゃなかったと思ったこともありました。しかしその出会いがなかったら、SHOPはオープンしていないですし、1人でお店をやっていこうとも考えていません。少し冷静に考えて、人生の経験に無駄なことはない、プラス思考で考えていこうと、意識を切り替えたのです。
経営なのか、物づくりなのかではなく、
自分が楽しめることを優先した。
仕事を行う上で大切にしているのは、ぶれない気持ちです。1人になって、空いたスペースが寂しくなったこともあり、洋服や靴下なども仕入れて置いています。でもバッグやエプロンは、一つ一つ自分で作っています。たまに「洋服は作らないのですか?」と聞かれることもありますが、洋服を作ることは、実は自分の中では楽しくないのです。自分が楽しくないと、いい物は作れないのです。人からこういう物を作ってと頼まれても、好きじゃない生地で、好きじゃない形の物を作るのは、苦痛になってしまうのです。
しかしある時、商工会議所の方に「前田さんのやっていることは経営じゃなく、趣味の延長になっていませんか」と言われて、ショックを受けたことがあります。経営がしたいのか、物づくりがしたいのか、どっちがしたいのか。経営をしたいなら、人を雇って、製造を工場に出して、たくさん作って……。自分の頭の中で、経営と物づくり、どちらかに決めないといけないって考えれば考えるほど、追い詰められました。今思えば、自分で追い詰めていただけなのですが、そこから自信をなくして、しばらくどうすればいいのか悩んでいました。
その後、2017年8月に、起業・創業サポートオフィスのポートインク(Port.inc)で開かれた「ものづくりウラ会」に参加した際、ちょっとした転機がありました。物づくりに関わる人たちの考えをいろいろと聞き、話をしましたが、参加していた同業の人たちが、「別にどっちかに決めなくてもいいんだよ。楽しんでやることが、一番大切じゃないかな」と言ってくれたのです。目からうろこが落ちる感じでしたね。
同じ頃、テレビで偶然見たドキュメント番組『セブンルール』の中で見た、女性がクッキーを作って売っている話でも考え方が変わりました。その人は経営がしたくて、クッキーを作りたいわけではない。経営がしたいから、何をすべきなのか考えてたどり着いたのがクッキーだったというのです。それを見て、私は「えー?」って感じになりました。その人は、たまたまクッキーだったかもしれないけど、自分が作りたいのは、バッグやエプロンとはっきりしている。じゃあ私は、その大好きな物づくりを窮めたいと、逆に開き直れたのです。
思いを届けたというこだわりが、
結局は一番の近道だった。
いろいろ悩んで、自分の進むべき方向が見えてきた頃に、次の転機となる出会いが訪れました。その方は、2015年に東京でのイベントへ出展した際に出会った女性で、「困ったら、いつでも声を掛けてください」と言われていたのです。その後2017年に、「イノベーション・ハブ・ひろしまCamps*」のコンシェルジュになられていた彼女に連絡を取って、「経営はしたくない。でも好きな物を楽しく作って、ある程度の生活ができるレベルにはしたい」と相談しました。すると彼女は「しっかりとブランディングをして、値段を上げましょう」と、的確なアドバイスをくれました。その後も相談させていただくうちに、少しずつですが自分なりのやり方が分かってきて、自信も生まれてきたのです。
やっていることは間違えていないという確信も出てきました。売り上げが全くない日があれば、もちろん不安にもなります。しかし売り上げゼロよりも、自分の思いと違うことをして失敗する方が怖いのです。思いと違うことをして売れたとしても、きっとうれしくない気がします。自分がぶれないことが、本当に大切だと思うようになりました。
自分がやりたいことは何なのかを突き詰めると、私は商品と一緒に、一点一点に込めた思いも、お客さんへ届けたいのです。「そんな思いで作っているのか」と分かってもらえると、お客さんも私も楽しくなると思うのです。だから、たくさんのお店に置いてもらうより、自分の目の届く範囲内で売るのが一番だと考えています。
一人になった時は不安ばかりでしたが、いろいろな場所で、いろいろな人と出会ったことから生まれたご縁が、私の方向性を決めてくれたと感じています。創業は、みんなが同じ必要はありません。いろいろなやり方があっていいと思います。私は、それを発見できたことが大きな収穫でした。大変なことはまだたくさんありますが、大好きな物づくりに挑戦できる環境があるのは、うれしいことです。
* イノベーション・ハブ・ひろしまCamps(キャンプス)は、新たなビジネスや地域づくりなどにチャレンジする多様な人が集まるイノベーション創出拠点です。コーディネーターが常駐し、創業相談なども開催しています。
https://www.camps-hiroshima.jp/
事業所名 | tumugi |
---|---|
所在地 | 〒733-0802 広島県広島市西区庚午中3-7-3ミカグランドカフェ 2階 |
連絡先 | TEL:082-961-3763 |
ホームページ | http://tumugi.me/ |
創業 | 創業2011年 |
従業員数 | - |
業種 | 小売業 |
事業内容 | 手作りバッグやエプロンなどの製作・販売 |