里山で駆除された野生動物の肉を活用して、
ペットの健康を支える無添加フードを販売。

  • PROFILE
  • 東京の会社でウェブサイトの企画やデザイン等に携わっていたが、東日本大震災をきっかけに故郷である広島に戻り、独立する。以前から自然保護に関する取り組みをしたいと思っていたところ、人間の都合で野生動物が害獣として駆除され、土に埋められ処分されている現実を知り、何とかしたいと考えるようになったのが出発点。ビジネスモデルをブラッシュアップし、市場の動向を見極めた上で、2017年8月に株式会社Foremaを設立。ペット用の鹿・猪肉を販売するECサイトの本格展開を開始する。

教えて先輩!創業でつまずくポイント、乗り越えるコツ その1
大切なのは問題解決に対する強い思い

害獣駆除という究極の食料廃棄を何とかしたい!
その思いがユニークなビジネスの出発点。

 Foremaでは、害獣として駆除された鹿や猪の肉を活用して、ペットの無添加食材を販売するECサイトを運営しています。この会社を始める以前は、東京の会社でウェブ制作に携わっていましたが、東日本大震災がきっかけとなって独立を余儀なくされました。といっても、独立してすぐにこの事業を始めたわけではありません。最初は前職同様にウェブ制作をメインの事業とし、制作の合間に自分でもウェブサイトやポータルサイトを立ち上げて、スモールビジネスのトライ&エラーを繰り返していました。だから、特に“創業”という意識もなく、いくつかのトライ&エラーの中からForemaのビジネスモデルが残り、ごく自然な流れの中で新規事業がスタートしたというのが正直なところです。

 では、なぜジビエかというと、もともと自然保護に関する取り組みに興味があり、人間の都合で野生動物が大量に殺され、土に埋められ処分されていることを知り、何とかしたいと思ったことがきっかけです。動物保護の観点からいうと殺さないのが一番ですが、田畑を荒らされる里山の人々にとってはそういうわけにもいきません。それならちゃんと食べるくらいのことはしないと、命に対して失礼です。害獣駆除という名の下の究極の食料廃棄ですからね。われわれが飲食店に対してではなく、ペット用の販路をメインに扱っているのもそこが理由です。結局、廃棄につながる飲食店をメインターゲットにしていたら、根本的な問題解決には至りませんからね。
 当然のことですが、創業はそれ自体が目的ではありません。強烈に解決したい問題があり、かつリスクテイクに対して喜びや生きがいを感じられるなら、その人はなるべくして創業者の道を歩むのだと思います。自分の中に問題解決に対する強い思いがなければ、その後の経営も軸がないものになると私自身は考えています。

教えて先輩!創業でつまずくポイント、乗り越えるコツ その2
事業継続の鍵を握るのは、やはり資金調達

経営者としてのセンスが鍛えられた、
東京のベンチャーキャピタルとの交渉。

 Foremaを始める際、まず取り組んだのが仕入れ先の開拓です。方法は至ってシンプル。 害獣被害などのニュースを見かけたら、その地区の役場に電話をかけて生産者さんを紹介してもらいました。最初は警戒されることもあり、なかなか心を開いてもらえなかったのですが、九州の生産者さんと取引できるようになったことから、徐々に実績を増やしていけました。一つ成果を上げると、それが次につながっていったという具合です。
 その後も全国の野生鳥獣処理施設に、片っ端から電話をかけるなど、生産者の開拓にはとにかく地道な努力を惜しみなく継続してきました。その結果、現在は数十カ所の産地を抱えることができ、これが「安定供給」という当社ならではの強みを生み出しています。実は、これまでジビエがペットフードとして製品化されなかったのは、安定供給できないという問題があったからです。しかしForemaでは、北海道から九州まで幅広い生産者とつながりを築くことでこの問題を解決。人間同等の衛生基準で処理した、安心・安全の無添加フードをお届けする「ペットさん定期便」という宅配サービスを安定的に運営できています。

こうしたサービスが確立し、ユーザーにもある程度認知されていくと、成長に向けた戦略に、成長のための資金繰りも必要となってきます。Foremaの場合、スタートアップ時は政策金融公庫を利用しましたが、事業を成長させるに当たっては、東京のベンチャーキャピタルから出資を受け、資金調達を行ってきました。継続的な成長を考えると、ベンチャーキャピタルはとても頼もしいパートナーである反面、その審査はかなりシビアです。自分が提携先を探している時は、たった15分でプレゼンテーションが終了するなど、心折れる出来事がたくさんありました。しかし、そのうちに相手が見たい未来絵図が分かるようになり、多少なりともビジネスセンスが磨けたと感じています。資金調達は常に経営者の悩みのタネでありますが、ここを乗り越えないことには、スタート後の成長は望めないと思います。

教えて先輩!創業でつまずくポイント、乗り越えるコツ その3
他者のアドバイスや人脈づくりに翻弄されない

これから取り組みたいのはペットヘルス。
そのための下準備も着々と進行中。

 では、さらなる成長に向けてどんな取り組みをしているかというと、今後はペットのヘルスケア方面に力を入れていきたいと考えています。人間のアレルギー患者が増加しているのと同様、実はペットの間でもアレルギーが増えており、その要因の一つが食生活ではないかと言われています。そこで、当社では山口大学との産学連携で、ペットの腸内フローラに関する研究を進めています。具体的には普段の食事と腸内細菌の相関関係を定点観測できるシステムをつくり、ペットの未病を探るというものです。例えばペット大国のアメリカでは、ペット創薬などが今後伸びる分野として期待されています。それに比べると日本の市場はかなり遅れていますが、そんな中でもForemaが先陣を切って、ペットの健康づくりに貢献できるサービスをお届けできればと考えています。

 最後に、後輩創業者の皆さんへのアドバイスとして、まずは市場規模の算定とビジネスモデルのブラッシュアップをできるだけ短期間で仕上げ、スモールスタートによるトライ&エラーをひたすら繰り返すことをお勧めします。また創業準備時は、いろいろな相談窓口やセミナー等で専門家の方たちが何かとアドバイスしてくださると思います。そうした方たちの意見を参考にするのは良いのですが、聞き過ぎて自分を見失わないように注意してください。さらに創業後も、交流会等で人脈を広げる機会が増えますが、そのお付き合いにどっぷりはまるのはいかがなものかと思います。あくまでも大切なのは本業です。人脈づくりに翻弄されて、本業をおろそかにするようなら本末転倒です。お手本にするなら、ゼロからイチを立ち上げた起業家を探し出し、本当の経験則にそったアドバイスをもらうようにしてください。

会社情報

事業所名 株式会社Forema
所在地 〒730-0851 広島県広島市中区榎町4-23 2F
連絡先 TEL:082-208-4591
ホームページ https://www.forema.jp
創業 2016年3月
従業員数 11名
業種 小売業
事業内容 スローガンに「無益な殺生を有益な経済活動に」を掲げ、通信販売を中心に野生鳥獣(主に鹿・猪)のお肉を市場に還流させる仕組みづくりを行う

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