起業に必要なのは、 ミッションとパッション。 自分を信じることが力となり、 疑う力が努力の原動力になる。
株式会社ジャパネットたかた 前代表取締役

髙田 明さん

  • PROFILE
  • 1948年長崎県生まれ。大阪経済大学経済学部卒。京都の機械製作会社を経て、生まれ故郷の平戸へUターン。父が経営していた「カメラのたかた」を手伝いながら、事業拡大に尽力する。1986年には独立して、株式会社たかたを設立。1990年にラジオショッピング、1994年にテレビショッピングと、通販事業に本格的に参入。1999年には現社名に変更。2013年に過去最高益を達成した後、2015年に社長を引退。現在は株式会社A and Live 代表。

「ジャパネットたかた」という社名を知らない人は、ほとんどいない。その販売力は同社の魅力だが、従業員約2400人、年商1500億円以上を売り上げる企業グループでありながら、本社を創業以来ずっと長崎県佐世保市に置き続けるという“地方発のビジネスモデル”にも同社のこだわりと魅力が詰まっている。都市と地方の格差が問題視される中、ジャパネットたかたは佐世保の社屋内にTV局顔負けの自社スタジオを完備し、社員自らが制作する通販番組を全国へと毎日発信している。それは地方におけるビジネスの一つの完成形だといえるだろう。「なぜ、佐世保なのか?」という問いに対して、「どうして佐世保を離れる必要があるのか?」と創業者の髙田明氏は答える。大胆な戦略とスピーディーな展開で、常に通販業界の第一線を走り抜いてきた髙田氏の足跡から、地方で創業するということの可能性を探ってみる。

地方での創業のポイント

地方にはデメリット以上に良さがあり、それを強みに変えることも可能。

東京に行く必要はない。インフラは十分すぎるくらいに整っている。

地方の人が「地方の格差」を言い訳にした時点で負け。

ラジオ番組での成功をきっかけに、
通販事業での新たな挑戦がスタート!

Q. 家業を手伝う中での創業だったそうですが、創業までの道のりを教えていただけますか?

髙田:創業に行き着くまでのパターンには2通りあると思います。一つはテクノロジーなどを軸に、これまでにない商品、これまでにないサービスを作り出すパターン。これはシリコンバレーのITベンチャーなどに多く見られます。二つ目は与えられた課題を一つ一つ解決することから始め、コツコツと成長し続けるものです。これまでにあるビジネスモデルをベースに創業するパターンになりますが、私の場合はまさにこのパターンです。残念ながらITベンチャーのような華々しさはないですね(笑)。
振り返ると、最初は自分で創業しようなんて意識は全くなかったんですよ。大学卒業後は得意の英語を生かしたいという思いから、京都の機械メーカーに就職しました。そこで、海外駐在員として欧州で働く貴重な体験をさせてもらいました。その後、友人から一緒に翻訳会社をやらないかと誘われて会社を退職したものの、創業話は頓挫。25歳で故郷の平戸に帰って、父のカメラ店を手伝うことにしました。

創業当時の店舗の模型

家業を手伝いだしてからまもなく、新しい営業所を長崎県松浦市に出すことになり、その店舗を任されました。その後も佐世保に支店を出すなど、家業は発展し続け、私自身も1986年に家業から独立して、佐世保で株式会社たかたを設立しました。これが37歳の時です。ソニーさんの特約店となり、新たな道を歩み始めました。
転機となったのは1990年、地元ラジオ局が制作したラジオ番組に出演した時のことです。番組内でコンパクトカメラを販売したところ、なんとたった5分で50台も売れたんです。これにはびっくりしました! その後、全国のラジオ局へ「ラジオショッピングをやらせてください」とお願いにあがり、約1年かけて全国のラジオ局でのネットワークを構築していきました。ラジオでノウハウを築いたら、次はテレビです。「ジャパネットたかた テレビショッピング」がスタートしたのは1994年のことでした。

Q. 転機を迎えてからの展開がすごくスピーディーですよね。資金繰りなどの不安はなかったのですか?

髙田:私としては一歩一歩積み上げてきただけなんですよ。夢を持って精進していけば、必ず成果は得られます。コツコツやっていれば、階段を一つずつ上っていけるものです。ただ、弾みが付いて一気に上れる時もあります。スピーディーに感じられたのは、そうした弾みに後押しされた時期ですね。
事業をやる際、“お金”を先に考えて一歩も踏み出せないようじゃダメです。私の場合、地道に積み上げてきた結果、ラジオショッピングと出合い、テレビショッピングへとたどり着きました。日々の課題に向き合っていれば、必ず道は開けます。大切なのは夢を持つこと、そして継続することです。

その起業は本当に意味があるのか?
価値ある本質を持たない会社は生き残れない。

Q. 当時の通販業界にも既に先駆者がいたと思うのですが、その中に入っていく自信はあったのですか?

髙田:正直、他は見てなかったですね。企業にはそれぞれミッションというものがあります。私には、モノの向こうにある生活や変化を伝えたいという思いがずっとありました。より多くの方の快適な暮らしを支えるパートナーでありたいと願っていましたから、よそと比べてどうこうというよりは、われわれが目指すミッションを達成することに一生懸命でした。
創業においても、ビジネスに対する考え方そのものを磨くことが重要で、行政の支援でもそこに力を入れてほしいと思います。「あなたがこれから始めようと思っているビジネスは、本当に価値があるのでしょうか?」という本質の部分です。近江商人に「三方良し」という言葉がありますが、そのビジネスを通して、「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つが実現できるのか、きちんと検証してみてください。この本質とは、いわゆる企業理念にもなり得るものですが、それを築き上げるのは創業者の役目です。
さらには、「不易流行」です。変わらない本質(不易)を大切にしながらも、新しい変化(流行)を取り入れていく力が企業には必要です。これから創業される方には、真剣に考えてほしいポイントですね。


Q.人づくりも創業者の大切な役目だと思いますが、どのように考えてこられましたか?

髙田:人材に関しては、やはり同じ価値を共有している組織は強いです。例えば野球で、監督が代わっただけでチームが目を見張るパフォーマンスを発揮することがありますよね。これは同じ価値を共有する取り組みが行き届いたのだと思います。企業も同じです。先ほどの「不易流行」の不易の部分、つまり企業理念を社員一人一人が自らのミッションとして受け止め、共にがんばるベースを築かねばなりません。
それが創業者の責任であり、そのベースがあれば、100年先の未来でもずっと輝き続ける企業になれると信じています。地域にとっても、そうした企業があることはとても心強いと思います。何より地域の元気になります。

一生懸命やっている人に失敗という言葉はない!
失敗は自己更新のチャンス。

Q. ところで人は失敗からより多くのことを学びますが、創業の後輩たちに教訓となる経験はありますか?

髙田:私、失敗したことがないんですよ(笑)。まあ解釈の違いですけどね。失敗は自分に課せられた試練であり、課題なんです。それを「自己更新」の機会ととらえれば、乗り越えようと努力し、次のステージに進めるのです。人生に失敗なんてないんです。もし「失敗した」と感じたなら、それはその人が一生懸命やっていない証拠です。私自身も試練を乗り越えて、会社を成長させることができました。これから創業される方にも、すべては成長のためのプロセスだと考えて、力強く乗り越えてほしいです。


Q. なるほど。しかし失敗はなかったとしても、困難はいろいろとあったのではないですか?

髙田:そうですね。これまでで一番の困難といえば、TVショッピングのスタジオを造った時でしょうか。TVショッピングを始めた時、当初は東京や福岡、長崎の制作会社に番組作りを依頼していました。しかしコストが高い上に、番組が出来上がるまでの時間も相当かかります。モノの向こうにある生活の変化を伝えたいのに、製品の変化に追い付かないのです。
そこで佐世保にスタジオを造り、自社制作体制に切り替えることにしました。着手したのは9月頃でしたが、その時点で番組作りに携われる人材はゼロ! 放送は翌年の3月からでしたので、本当に間に合うのだろうかといった状態でした。実際に放送が始まった時には、派遣会社の方たちの力を借りて、社員が現場で学んでいくという状態でした。困難ではありましたが、結果的に番組作りのスピードが飛躍的にアップしました。今では、専門チャンネル「ジャパネットチャンネルDX」が衛星放送やケーブルテレビ、インターネットでも見られます。当時はみんなに無理だと言われましたが、佐世保から全国のお客さまに、毎日24時間、最新の情報を発信できています。大きな困難も真摯に向き合っていれば、少しずつ道が見えてきます。継続する努力が何よりも大切なのです。

地方の格差を口にした時点で負け。
“できる!”というエネルギーを持とう。

Q. 全国に市場を広げるため、本社を東京に移そうとは考えなかったのですか?

髙田:これまで同様の質問を何度も受けてきましたが、そのたびに私は「なぜ、東京に行く必要があるんですか? 佐世保にいれば、大好物の新鮮なイカも食べられます。離れる必要性なんて一つもありません」と答えているんですよ。皆さんが暮らす広島も同じです。情報もアクセスも決済の面でも、すべてのインフラが十分すぎるくらいに整っているでしょう。出ていく必要がどこにありますか? 広島にいれば、おいしいカキだって食べられるのに!
私は、地方の人が「地方の格差」を言い訳にした時点で負けだと思っています。重要なのは、“できる!”というエネルギーを持つことです。地方には、デメリット以上に良さもあり、それを強みに変えることも可能なはずです。格差を口にして、できない理由を考える前に、まずは一歩踏み出してみましょう。創業する時は、自分を信じてあげることが大切です。
とはいえ、同時に自分を疑う気持ちも忘れてはいけません。できないことを謙虚に受け止める心がなければ成長しませんし、さらに努力しようという気持ちも湧いてきませんからね。


Q. 最後に創業を考えている方々にメッセージをいただけますか?

髙田:最初の段階から、目指すものをガチガチに固める必要はないと思います。例えば任天堂さんのように、花札を作っていた会社がゲーム会社になるなど、企業の進化は融通無碍。やっているうちに目指す方向が変化するなど、よくあることです。サクセスというものは後悔のない人生をつくることであり、それは好きなことをただ愚直にやり続けていくことだと思います。これから会社を興そうという方たちには、困難にぶつかったとしても、夢をあきらめず、やりきろうとする気持ちを持ち続けてほしいですね。創業に必要なのはミッションとパッションです。努力したつもりにならず、本当に努力している自分がそこにいるか、自問自答してください。日本を、そして地方を元気にするには、夢を描きカタチにする力が必要なんです!

株式会社ジャパネットたかた


【創業】1986年1月
【所在地】長崎県佐世保市日宇町
【ホームページ】http://www.japanet.co.jp/shopping/

ページトップへ戻る