お店を開くことがゴールではなく、
続けていくことに本当の面白さがある。

  • PROFILE
  • 数多くの飲食店が立ち並ぶ観光地・尾道。その厳しい環境の中で、店長を任されて6年、経営者として店を引き継いで3年、たった一人で焼き鳥店を切り盛りしてきた河村さん。「特別なことは何もしていない」というが、お客さまに対する細やかな気遣いと経理面の堅実な管理能力は、息の長い飲食店経営に一役買っている。

ひろしまの創業のポイントひろしまでの創業のポイント

人と人との距離が近い尾道市の土地柄がありがたい。

続けていくことに不安もあったが、商工会議所や常連客が支えに。

地元・尾道市を愛する気持ちで街がつながっている。

6年におよぶ雇われ店長時代が、
経営センスを磨く勉強の時間に……。

 現在の場所に飲食店をオープンさせたのは、今から9年前のことです。当時は同じエリアに店を構える焼き肉屋さんがオーナーで、私は雇われ店長という形でお店の運営を任されていました。「そろそろ自分でやってみる?」とオーナーに言われ、独立したのは3年前になりますが、やっていることは変わらないので、ゼロから始める方に比べると、とてもスムーズに創業に踏み切れたと思います。
 しかも私の場合は、雇われ店長時代も給料は歩合制で、経理面も自分で帳簿を付けていたので、自然と経営者の感覚が養えていたと感じています。今思えば、6年に及ぶ雇われ期間は、経営者になるための勉強の時間だったんだなと感謝しています。オーナーが独立を勧めてくれたのも、「独立しようか、どうしようか……」と迷っていた私の背中を、さりげなく押してくれたのかもしれませんね。常連客の皆さんも私の独立を応援してくださり、中には融資に関する情報を提供してくださる方もいて、創業前から応援してくれる固定客がいたのは、とてもありがたいことだったなとしみじみ感じました。商工会議所の方々も親身になって相談に乗ってくださったので、とても助かりました。この10月で独立してから丸3年目を迎えますが、常連客の皆さんが、忙しいことを一緒に喜んでくださるのが何よりもうれしいです。

帳簿と真面目に向き合うこと。
それが長くお店を続ける最大の秘訣です。

 私がなかなか独立に踏み切れなかったのは、飲食店経営は年間を通して波があり、持続的に経営が行えるかどうか不安だったからです。飲食店のオープンを考えている方たちが決断を迷っているのも、きっと続けていくことに不安を感じているからだと思います。
 よく飲食店は、経費のバランスが「仕入れ3割、人件費3割、家賃とその他3割」といいますが、当店の場合は私一人でやっているので他に人件費はかからないし、広告を打つこともめったにありません。テナントにかかる経費も、この辺りの客層はほとんど地元の方ばかりで、観光客が行き交う海岸通りなどに比べると割安です。お客さまが多い時もそうではない時も、テナント料にかかる経費は変わりません。立地はもちろん重要ですが、長くお店を続けていくつもりなら、テナント料は少しでも安い方が有利です。飲食店の経営を目指すなら、経費面は徹底的に抑えておくべきなのです。
 他にも仕入れのバランスなどは、その日の状況によって見直す部分があります。当店では質を落とすのではなく、“ムダを生まない”という観点で、集客の見込みに合わせて買い過ぎないように気を付けています。幸いなことに、私は帳簿を付けるのがそんなに苦ではないので、家計を切り盛りするような感覚で、楽しみながら帳簿と向き合っています。余談ですが、融資の話を進める際も、小まめに帳簿を付けていたのがとても重宝しました。これから飲食に参入しようという方も、丁寧に帳簿をチェックする習慣を付けておいた方が何かと便利です。

人と人の距離が近い、尾道。
その温かい土地柄が客商売にはありがたい。

 都会や地方にかかわらず、飲食業は入れ替わりの激しい業界です。この尾道も例外ではありません。そんな中でも9年もの間、お店を続けて来られたのは、個人店ならではのほどよい距離感を生かして、お客さまと良好な人間関係が築けたからだと思っています。尾道という街そのものも、人と人との距離が近く居心地が良いですね。客商売をやっていくには、とてもやりやすいところです。
 たまにご近所の飲み屋さんが、お客さまと一緒に当店に食べに来てくださるのですが、もしかすると「同業者同士、お互い助け合って、街を盛り上げていこうよ」といった気持ちがどこかにあるのかもしれませんね。それぞれの地元を愛する思いが、この温かさにつながっている気がします。
 最近は飲食業を目指す若い方も多いようですが、この仕事は見た目ほど、華やかな仕事ではありません。立ち仕事だから体力もいるし、体調を崩せばお店を開けることもできません。風邪のシーズンなどはお客さまにうつさないためにも、要注意!体調管理には十分気を付けてください。拘束時間が長いことも、この業界の宿命です。お店が休みの日でも、お客さまのいない時だからこそ、やらねばならない仕事がけっこうあります。そうした舞台裏の苦労を知った上で、息の長い経営を目指してほしいと思います。

会社情報

事業所名 壱番鶏
所在地 〒722-0045 尾道市久保2-15-31
連絡先 TEL : 0848-37-5039
ホームページ
創業 2013年10月
従業員数
業種 飲食店(焼き鳥)
事業内容 焼き鳥店経営

ページトップへ戻る