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独自の視点で読み解く㉒

広島東洋カープの投手からレモン農家へ
「合同会社MINATO」

元広島東洋カープの投手として活躍し、現在は広島県東広島市安芸津町でレモン農家を営む戸田隆矢さん。
セカンドキャリアとして農業を選んだ理由、赤土での栽培への挑戦、そして多岐にわたる事業展開と将来の夢について、広島で活躍するタレントの中島尚樹さん・井上恵津子さん夫妻が現地を訪れ、じっくりとお話を伺いました。
絶景の広がるレモン畑での収穫体験や、こだわりのレモンシロップの試飲、そして現役引退から創業に至るまでの赤裸々なエピソードを含む、笑いあり驚きありのインタビューの模様をお届けします。

合同会社MINATO 代表 戸田隆矢さん

兵庫県出身。2011年にドラフト3位で広島東洋カープに入団し、貴重な左腕として先発・中継ぎを問わず活躍し、チームのリーグ優勝にも貢献。引退後は、自主トレで縁のあった広島県東広島市安芸津町へ移住し就農。現在はレモン農家として、瀬戸内の温暖な気候、安芸津町の土壌を生かしたレモン栽培に情熱を注ぎ、セカンドキャリアで新たな挑戦を続けている。

現地や取材の様子は、動画でもご覧いただけます。

絶景の中で育む「トッティレモン」。

  • 井上さん いやーすてき!絶景ですね。これを見ながらいつも作業してらっしゃるんですか?
  • 戸田さん そうなんですよ。この風景がすごく良くて。最高な場所で「トッティレモン」を作らせてもらってます。
  • 中島さん レモンにとっては太陽の光って大事ですもんね。
  • 戸田さん すごく大切ですね。かんきつ類で大事なものは太陽が2つあるって言うんですよ。上から降り注ぐ太陽と、海に反射する太陽。この2つは本当に要るので、そういう意味でもこの場所はしっかりと太陽を浴びられるなと思って。
  • 中島さん 隣はジャガイモでしょ? 360度ジャガイモなんですけど。
  • 戸田さん そうなんです(笑)。安芸津といえばやっぱりジャガイモですよね。この赤土の特徴は鉄分やミネラルが豊富でジャガイモとすごく相性が良く、ここも前はジャガイモ畑だったんですが、僕は「この土でレモンをやらせてください」って言って。今までここでレモンをやった人がいなかったみたいです。
  • 井上さん ちょっと聞きたいのですが、まずはレモンってできてるんですか?
  • 戸田さん 一応できてはいるんですけども、3年目で収穫できるかなと思ったんですが、自然とのいろんな兼ね合いがあって、なかなか成熟しきってないってところです。
  • 井上さん 私知らなかったんですが、レモンって3年もかかるんですか?
  • 戸田さん 3年でも早い方で、実はなるんですが、剪定して落とさないといけないんです。実に栄養が行ってしまうと木が大きくならないので、まずは木を大きくするっていうところからです。
  • 中島さん あら、かわいい。
  • 井上さん トッティレモン!
  • 戸田さん そうなんですよ。実り立てなのでグリーンレモンですが、これがどんどん黄色くなっていくと、いわゆるスーパーに置いてあるレモンになります。

全くの素人から、農業の世界に!

  • 井上さん 戸田さんって、農業はもともとお得意だったんですか?
  • 戸田さん 全くやったことないです。家業も全く違います。
  • 中島さん 現役引退されて第二の人生を探すときに、なぜレモン農家だったんですか?
  • 戸田さん 2020年に左肘を手術しまして、そのオフに同級生がやっている農業の現場を見に行った時に、何かに携わりたいなと思ったのがきっかけで。それまでは素人なので、水をあげてたらできるものだと思ってたんですが、すごく深いところがあったのです。
  • 中島さん 現役の時から考えていたんですか?
  • 戸田さん 戦力外が発表された2日後ぐらいに、知り合いの方から「レモンを一緒にしないか?」っていうお電話が来て。これは何かご縁があるなっていう。
  • 井上さん えー! すごいご縁ですね。運命を感じる。
  • 戸田さん 「はい! やります!」って即答で。あの電話がなかったらレモン農家にはなってないと思います。カープに入った時から仲良くさせてもらっている知り合いの方が、僕の師匠となる甲斐農園(東広島市安芸津町)の甲斐直樹さんを紹介してくれて。甲斐さんの人柄と、やっぱりここの風景が決め手でしたね。それに安芸津という町自体が、気候風土が良いと言われていて、作物を育てやすいんです。ジャガイモも安定した収穫量と味になるそうです。
  • 中島さん とはいえ、今年は暑すぎましたもんね。自然との戦いですね。
  • 戸田さん ジャイアンツ、タイガースも手ごわかったんですが、自然も手ごわいですよ。読めないですから(笑)。今、愛を注いで育てています。
  • 中島さん でも、それってその間、収入がないということですよね?
  • 戸田さん そうですね。なので、今は師匠の甲斐さんのレモンを使わせていただいて、レモンスカッシュやレモンサワーのもととなるシロップを作成して、販売もしています。飲んでみますか。今日はホットレモンでいきましょう。
  • 中島さん せっかくなんで、そのグリーンレモン、収穫させてもらってもいいですか?
  • 井上さん こだわりのシロップをいただきます。……ああ、めちゃくちゃおいしい! レモンの味わいはしっかり感じられるけど、甘さもちょうどいいです。酸っぱいだけじゃなくて、なんかホッとできる甘さがあります。
  • 戸田さん ありがとうございます。商品のコンセプトも「お子さまにも飲めるように」っていうので作ったんです。僕の子どもが3歳と2歳なんですが、すごくおいしいって言って飲んでくれたのがきっかけで。てんさい糖とレモンのみで作っていますが、原価がめっちゃかかってます(笑)。一般的には原価率10%くらいが平均だと思いますが、このシロップをお店で出すときは23〜24%くらいかかってます。やっぱり、こだわって作りたかったので。

新しい人生を踏み出したときの心境は?

  • 中島さん 創業に至るまで聞きたいことがたくさんあるんですが、2022年に戦力外通告を受けた時の気持ちはどうでした?
  • 戸田さん 戦力外が発表される前の日に、本人に電話が来るんですが、その電話が来た瞬間に、ほんとにほっとしました。
  • 中島さん え、どういうことですか?
  • 戸田さん 2020年に手術をしたのですが、それまでずっとケガの連続だったんです。手術して最初は良かったのですが、試合で投げる頻度が増えるとまた痛みが出てきて、「ああ、またこの痛みと戦いながらやっていかないと」っていうタイミングに電話をいただいて。「やっとこの痛みから解放される」みたいな気持ちが、僕の中ではすごくありました。
  • 中島さん なるほど。
  • 戸田さん 2020年の手術後の2年間、育成選手としてまだ野球ができる時間があったんですが、その時間が今の会社を立ち上げるきっかけ、レモン農家をするきっかけになったので、その2年間はすごくありがたかったですね。結婚したのも2022年、子どもが生まれたのも2022年、会社を設立したのも2022年なんです。思い立ったらすぐ行動しちゃうタイプなので。すべてを一気にスタートしたみたいな感じです。
  • 井上さん 奥さまは、創業に対して何かおっしゃらなかったんですか?
  • 戸田さん 「すごくいいじゃん、やろうよ」みたいな。右も左も分からない、しかも子どもが生まれたタイミングなのに、不安は全くなかったみたいです。
  • 中島さん すごいなー。うちは2人ともブレーキなんですよ。なかなか踏み出せない(笑)。
  • 井上さん レモン農家以外にも、いろんな事業をされているんですよね?
  • 戸田さん そうなんです。ジャガイモの生産も始めていますが、自然由来の化粧水を近々発売予定ですし、ライブ配信事業っていう、ライバーを育成する事務所も運営しています。
  • 井上さん 何それ!? 農業からライバー育成って、広すぎません?
  • 戸田さん それも本当にすごくご縁がありまして。最初、妻がライバーとして誘われてたんですが、事務所の人が「旦那さん紹介してください」ってなって、会ってみたらすごくカープファンの方で。「ライバーじゃなくて一緒に事務所をやりましょう」って言われたのがきっかけで。
  • 中島さん すごいですね。出会いを全部、形にしていますよね。
  • 戸田さん ほんとそうですね。妻が知り合った人を僕と出会わせてくれて、また仕事に発展するっていうことがすごく多くて。人に恵まれています。会社を設立した時も、知り合いの人が手伝ってくれて。だからこそ成功させて、そういう人たちに恩返ししたいという思いがすごく強いです。
  • 井上さん これから始めたいこと、将来のビジョンとかありますか?
  • 戸田さん そうですね。せっかく農業に携わったので、レモンやジャガイモだけではなくて、「トッティファーム」として、いろんな作物を取り扱っていきたいです。最終目標も決めていて、「トッティランド」をつくりたいなって(笑)。
  • 中島さん えっ、ウォルト・ディズニー的な?
  • 戸田さん 自然の中に作物があって、グランピングがあって、ここに来たらすごく落ち着くよっていう「トッティランド」をつくりたいねって話してます。自分で家とか小屋もつくってみたいですね、DIYが好きなんで。
  • 井上さん イメージが違いますね。泥臭い作業とかDIYとかするイメージじゃなかったです。
  • 戸田さん プロ野球選手になるのは通過点って、中学校の時から思ってたんです。夢をかなえたので、今もそういう次の夢を持って、かなえる方に進んでいきたい。人生まだまだ先が長いですから、いろんなことを経験したいです。

やりたければやった方がいい。
違えばやめればいい。

  • 中島さん 創業を考えている人に向けて、何か伝えることがあれば?
  • 戸田さん 僕が野球をやめて会社を立ち上げる時も「ほんまにできるのか」っていろんな方に心配されました。僕が全然勉強できないってのを先輩方も知っているので(笑)。そんな中で、セカンドキャリアでしっかりと自分で会社を興して成功させて、「戸田でもできるんだったら、誰でもできるな」っていう道筋をつくって、広島に貢献したいなと思ってます。しっかりと結果を出すので、今後も見ていただきたいですね。
  • 井上さん 新しいことに、飛び込む飛び込まないというのは、どうです?
  • 戸田さん やりたければやった方がいいと思う。やってみて違うんだったら、やめればいいし。農業は、場所があったらいつでもできます。もちろんお金がかかることだと、いろいろ考えると思いますが、お金がかからなくてやれる方法もあったり、周りが助けてくれたりと。
  • 中島さん 本当にがんばってたら、そうかあ。その姿を誰かがどこかで見てくれてますね。戸田さんは、やりたいことを楽しくやるってのがベースにありますよね。背中を追っかけていきたくなります。ちなみに、事業として具体的な目標数値とかはあるんですか?
  • 戸田さん 僕はレモンだけで1億円目指してるんです。プロ野球で年俸1億円を超えたら一流プレイヤーって言われるんですが、僕は現役の時に達成できなかったので、セカンドキャリアで1億円目指して今がんばってます。
  • 井上さん 今は何合目ぐらいですか?
  • 戸田さん 今はまだ0.1合目とかじゃないですか(笑)。これから、トッティレモンを広島だけじゃなくて全国に認知していただく活動をどんどんしていきます。
  • 中島さん ライバー事業の方は順調なんですか?
  • 戸田さん そっちは今ダントツで、うちの収益の柱になっています。
  • 中島さん そうなんですか。でも、戸田さんはちゃんと地に足ついて、農業もやっているというのがいいですよね。
  • 戸田さん 農業という基礎があるからこそだと思ってます。この産業は絶対なくならないと思うので。なんか農業って体力仕事で、しんどいっていうイメージがありますが、農業の平均年齢が70歳近いんですよ。若い方だともっとできるはずなので、どんどん若い人が入ってきてほしいですね。私の師匠甲斐さんも若い方で、千葉から移住してきてジャガイモ・レモン・みかんの農園を開いています。僕も、広島のレモンを、トッティレモンを全国に広げていく活動をどんどんしていきます。
  • 中島さん 今日は本当にありがとうございました。トッティランドができる日を楽しみにしています!
  • 戸田さん ありがとうございます。ぜひ遊びに来てください!



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