アウトドアの世界で輝く
どこにもないモノづくり

  • PROFILE
  • 幼少の頃より、廿日市市・大野町の豊かな自然の中で、海遊び・山遊びに親しんで育つ。趣味だった海での魚突きに使う銛(もり)を手づくりしたことから、アウトドアの道具製作が始まる。以後、キャンプに必要なたき火台などを独自の設計で作り、アウトドア製品のインターネットショップを開設。「頑丈さ」と「構造のユニークさ」にこだわった商品はアウトドア愛好者たちの間で話題を呼び、一生ものの道具として定評が高い。アウトドアでは"地域"の一部である自然の中で遊ばせてもらっているという思いから、地域を支える福祉にも関心を寄せており、福祉とアウトドア体験を組み合わせた放課後デイサービスなどの活動も展開。福祉に貢献できるビジネスの在り方を模索している。

教えて先輩!創業でつまずくポイント、乗り越えるコツ その1
ユーザーを巻き込むプロモーション

良いものはSNSで拡散される。
ユーザーの反応こそが最高の広告。

 アウトドアの道具を自分で作るようになったのは、15年ほど前のことです。当時、魚突きをして海遊びを楽しんでいたのですが、大物を狙うには既存の道具は小さ過ぎるため、大きな銛(もり)を自作したのが始まりです。それから自分で作った道具や、海外のメーカーから仕入れたものをインターネットで販売するようになりました。
 海遊びでソロ・キャンプをしていたこともあり、次第に海遊びの道具に加え、キャンプ道具も作るようになりましたね。既存のたき火台があまり気に入らず、自分で満足できるものを作ったのが「野良ストーブ」です。通常のたき火台は一斗缶のように口が大きく開けていますが、野良ストーブは口が三角で火力が集中しやすく、まきも最小限の数で済み、とても効率がいいんです。しかも、コンパクトに畳めて設置も簡単!暗い場所でも手早くセットできます。
 この「野良ストーブ」販売するにあたり、さまざまな工夫をしました。製品の使い勝手は、使用して初めて実感できますので、まずはプロトタイプを50台ほど作成して、モニターに使用した感想をフィードバックしてもらいました。そして実際の反応をもとに改良を加え、新製品として発売すると、その後はお客さまがSNSを通じて使用感を拡散してくれました。このような、お客さまを巻き込んだ製品開発やプロモーション方法は、最初に魚突きの道具のネットショップを経験したときに自然と確立されましたね。
 実を言うと、お客さまがどんな部分にニーズを感じていて、何に良い反応をしているかは、いまだによく分かっていません。おそらく自分にとって、永遠のテーマだと思います。ただ、当社の製品は今までなかったものであることは確かです。市場に存在しなかった製品を生み出して、世の中にその価値を問う。ここに、商売の面白さを感じています。

教えて先輩!創業でつまずくポイント、乗り越えるコツ その2
背伸びしない戦い方がある!

こだわりのモノづくりと戦略で、
大手にはできない戦い方を展開。

 当社の製品は、ありがたいことに大手小売店も扱ってくれています。どうやって販路を開拓したのかとよく聞かれますが、それは展示会の力が大きいですね。展示会には早い段階から参加していました。一般のお客さまも来られるので、お客さまたちの反応を見て、大手小売店は声をかけてくれたのだと思います。
 これまでアウトドア市場は大手ブランドか、それ以外か、といったくくりで語られてきました。しかし最近は、小規模ながらもオリジナリティに溢れた“ガレージブランド”が人気となり、個性やこだわりを重視した製品が注目されるようになってきました。ノラクリエイトも、こうしたガレージブランドの一つとして見なされることがあります。ただ、ガレージブランドの多くはアウトドア事業以外に本業を持っていて、ある程度のゆとりがある中で商品を製作しているんですよね。もちろん、それが悪いわけではありませんし、ゆとりがあるからこそ商品開発に遊びが生まれるのだと認めています。一方で、僕の場合はアウトドア事業が本業であり、一般的にイメージされるガレージブランドとは少し違うと考えています。ゆとりがない中での勝負だからこそ、戦略をしっかり立てる。僕がこれまで続けてこられたのは、経営資源が限られた弱者なりの戦い方をしてきたからだと考えています。例えば、注文をもらってから生産にとりかかるなど、限られた予算を最大限に生かす方法を選択してきました。また、オプションパーツを幅広く展開してお客さまがカスタマイズできるようにすれば、既存プロダクトの所有者が反応してくれるので、必要な数を事前に想定しやすいなどのメリットがあります。
 僕のモノづくりはとにかく“頑丈”で、“構造”にこだわったものが多いです。アウトドア製品いうと、移動を考えてとにかく軽量に抑えた道具になりがちですが、僕は壊れるのを気にしながら使うのがいやなんです。なので、つい頑丈に作ってしまいますね。さらに、レゴブロックが好きなせいか、構造も大切なポイント! 単一ではなく複数の機能を持たせたものや、課題を解決するための工夫が盛り込まれたものがたまらなく好きですね。お客さまも、そうしたこだわりに魅力を感じてくれているのかもしれません。

教えて先輩!創業でつまずくポイント、乗り越えるコツ その3
地域を支える人がいてこその商売

アウトドアは地域に支えられている。
福祉でも地域づくりに協力したい。

 経営者は5年後、10年後を想定していなければならないとよく言われますが、僕自身はそういう予測がちょっと苦手です。今後について考えていないわけではありませんが、決め付ける必要もないと思っています。将来について一つ言うとしたら、福祉への貢献を充実させたいですね。実は2016年に「放課後デイサービス」という形で、障害を抱える子どもたちの預かりサービスを立ち上げました。店舗の一角にも、デイサービスの子どもたちが作った商品コーナーを設けています。

 商売とは自分が考え、作ってきたモノ、つまり新しい価値を世に問うことですが、福祉は自分にとって、その商売を行っていく上で外せないと捉えています。アウトドアは、地域の方々が守ってきた自然の中で遊ばせてもらっているようなもので、その地域の皆さんを支えているのは福祉です。人は福祉が受けられないと、簡単に他の地域へと移ります。地域を魅力的に輝かせるには、福祉サービスの充実が必要と感じています。現在、ノラクリエイトでは商品の組み立てや発送・梱包をアルバイトに頼っているのですが、ゆくゆくは就労支援なども行えればいいなと考えています。
 最後に、これから創業を考える方へのアドバイスですが、僕自身は他人にアドバイスを求めすぎてはいけないと考えています。というのも、中小企業はとがったコンセプトで勝負しなければならないからです。資金力や実行力に優れた大手企業は、他企業と競合しても勝てるため、奇をてらうことなく、市場が広く求める製品を提示すればよいのですが、中小企業はそうはいきません。大手企業がまねできない、オンリーワンの価値でなければ太刀打ちできないのです。だから誰かに答えを求めているようではとてもやっていけない。創業の魅力は何でも自分で決められることです。責任は伴いますが、自分で決めた未来へ歩んでいけるのはこの上ない魅力です。皆さんにもぜひそれを味わってほしいと思います。

会社情報

事業所名 株式会社ノラクリエイト
所在地 〒738-0222 廿日市市津田3220
連絡先 TEL:050-3632-3040
ホームページ https://norastove.com
創業 2017年
従業員数 -
業種 製造業
事業内容 アウトドアの道具製作・販売

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